現役特養看護師が見る高齢者の延命治療の現状といろいろと思うこと

看護技術・看護ケア・キャリアアップ

特養に勤務している看護師のことねです。

この十数年の医療技術の進歩によってQOLと延命治療ということが話題に上がっています。 予期せぬ状態で急変が起こった時と、徐々に経口摂取できなくなってきた場合の延命について分けて現状と思うことをまとめてみました。

予期せぬ状況で心肺不全・停止状態になった場合

例えば、夜間巡視に行ったときすでに心肺停止している時を発見した場合です。

高齢者は様々な疾患を抱えている方がほとんどなので急変するリスクは高いです。 よって状態低下が見られたときだけでなく、入所時と定期的に(半年~1年おき)に本人ご家族に説明しています。

確認事項は、下記の3つです。

  • 気管内挿管・人工呼吸器装着
  • 胸部圧迫
  • AED

いずれもご高齢の場合、救命処置をしても助かる可能性が低いこと、一命は助かってももとの通りには回復しない可能性があり、 植物人間の状態になってしまう可能性があることを説明しています。

また、すべて希望しないときは、救急搬送せず死亡確認のみでいいのか、それとも救命処置はしなくていいけれど医師に診て欲しいのかということも確認が必要です。 後記の場合は、施設が提携している病院とならばスムーズにいくかもしれませんが、他だと断られるケースも多くあります。 事前に主治医とも十分に話し合って確認しておくことが重要です。

事前に確認をとっていても、その時になって気持ちが変わるご家族も多いので、必ず急変時に確認をとることも必要です。 そうすると、事前に確認をする意味があるのかと言われることがあります。

急変時には、丁寧に説明をする時間はありません。家族がパニック状態になっていることが多く、その状態で理解するのは難しいことです。 よって、事前に説明し意思確認をすることは、親族みなで話し合うきっかけともなり覚悟が徐々にできていくようです。

経口摂取できなくなってきた場合

医療技術の進展によって胃ろうや点滴など人工的に水分と栄養を補給する方法がいくつも開発されましたので、経口摂取ができなくなったと理由だけで死亡することは少なくなりました。 その反面、老衰や病気による終末期で、すでに消化や代謝が減退し体が受けつけない状態になっても、人工的に水分や栄養が補給され苦痛を与える結果になっていることも少なくありません。

点滴投与目的で入院し1か月ほどで亡くなる方もいれば回復する人もいますし、医師もどれが延命治療になるか助言するのは難しいようです。 人工的な水分と栄養を補給する方法がいくつかありますが、それらをしない方法を含めて一つ一つ利点と欠点を具体的に説明し、 本人の状況と希望を考慮し、本人・ご家族と一緒に考えていきます。

状態悪化時のみでなく入居時から定期的に説明しています。何が延命治療になるかは、人それぞれの価値観によって違ってきます。 その過程で重要なことは、日々その人らしく最期まで過ごせるような方法を選択できるようにお手伝いをさせて頂くことなのではないでしょうか。 あくまでも決めるのは本人と家族なので価値観を押し付けないように気をつけています。

そして、私が現在勤めている施設では、死をタブー視せず、死は自然なことであり穏やかに死をとらえられるように日頃から心がけていることがあります。 テレビなど見ていて日常で死の話題がでた時も、忌み嫌わず本人の思いや希望を聞き積極的に話すようにしています。

施設で死を迎える時も、本人・ご家族が許すならば、仲が良かった入居者がそばで手を握ったり見守ったりして一緒に過ごすこともあります。 最期のお見送りも正面玄関から皆でします。 今、自然の死にあまり遭遇することがありませんので、そうすることで想像がしやすくなり選択の枠が広がることがあります。

施設で数えきれないほどの看取りを経験し、生きるも死ぬも神様の思し召しであり、今できることを精一杯おこない積み重ねていくことが、 どれを選択しどんな最期を迎えようとも、悔いのない最期を迎えることにつながるのではないかと思いました。 それには、ご家族の協力、介護職・相談員などの他職種との連携も大切だと日々感じています。

また、4人に1人が認知症になる時代です。
認知症になると自己決定や意思表示が難しくなることが多いため、事前に延命治療について学習し、延命治療の希望や拒否を書式に残すことができるような機会があるといいですね。

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