特養看護師ことねです。
特養は、生活の場であり終の棲家でもあります。
それぞれの施設によって方針や体制が違いますが、特養は規定上、点滴投与ができません。 現在勤めている特養は、最期まで施設で支えるという理念のもと胃ろう・点滴による人工的な水分・栄養補給を行わず自然にゆだねる選択の方を多く看取っています。 貴重な体験から学んだことをまとめてみました。
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最期まで経口摂取
食事の時間にこだわらず、本人が食べたい時に好きなものを食べてもらっています。 普段刻みなのに、不思議なことに好きなケーキや寿司だったら咀嚼してムセずに食べられるという人がよくいます。
高カロリージュースをおしゃれなコーヒーカップに入れると飲む人や、自分のお気に入りの職員や孫に勧められると食べる人もいます。 水分200~300ml/日摂取するだけで数カ月も生きる人、看取りの覚悟をしたのに復活した人もいるので、 あきらめるのではなく本人の嗜好や体調をよく観察し工夫をして無理のないように勧めていくことが重要です。
また加齢・認知症などの病気によって食欲・嚥下機能が低下し、誤嚥性肺炎や窒息を起こす危険性が高くなります。 この危険性をご家族にも説明し、決して無理をせず本人の意思・嗜好に合わせて勧めていきます。 ご家族は、食べないと死んでしまうという不安から本人の意思に反して無理に勧め、本人が苦しむという状況を多く目にします。 食べたくないのに勧められる本人はつらいものです。そして、頻回に吸引することにもなりかなり苦しみます。
ご家族への支援
人工的な水分・栄養を投与しないと、ほとんどの方が木が枯れていくように静かにお亡くなります。しかし、そんな看取りに立ち会ったという人は稀です。 自然委ねることを選択した後も、餓死させることになるのではないか、何もしないことになるのではないかと、ご家族の心は揺れます。
すでに、消化や代謝の機能が減退し、身体が水分や栄養を受けつけない状態でなっているときに余分な水分や栄養の投与は身体的な苦痛になり得ます。 生理学的に、人工的な水分・栄養を投与しない方が、脳内モルヒネと呼ばれているエンドルフィンやケトン体の増加し鎮静効果をもたらすことを 選択する過程で説明します。
上記が頭でわかっていても、自分の親が衰弱していく姿を見て何もしないのはつらいのです。 経口摂取しないと衰弱していき死に至るのですが、そのことだけに執着しないように本人の体調にあわせ一緒にケアをしていきます。 お散歩に出かけたり、手浴足浴をしたり、お部屋に大好きなお花を飾ったりして本人が日々安心して穏やかに過ごせるようにできることは限りなくあります。
看取りやターミナルと言われると、したいこともできない状態だと思っているご家族が多いようです。 悔いのないように本人が何かしたいことがあれば、叶えられるようにできる限りの努力をご家族と一緒にします。 元気なときから本人の希望を聞いておくことも大切です。
いよいよ臨終に近づき外の事柄に反応する力がなくなった時は、 最期まで聴覚や触覚は残っていることを説明し、側にいて頂けるだけで充分本人が安心していることをお伝えします。 臨終時の肩呼吸を見て慌てるご家族もいますので事前に説明しておきます。
ご家族の精神状態は本人に大きく影響しますので、ご家族への支援は欠かせません。
自然に委ねるという選択するにあたってお勧めの本
「高齢者ケアと人工栄養を考える 本人と家族の意思決定プロセスノート」 清水 哲郎・会田薫子 医学と看護社
「高齢者施設における看護師の役割」 鳥海 房江 雲母書房
ケアする側も自然に委ねるという選択をした方を看取る経験はない方がほとんどですので、職員の間でも充分研修し学ぶことが必要です。 上記2冊は、とても丁寧にわかりやすく書かれていますので是非参考にしてくださいね。
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