がんの看護に携わっていた看護師のしぃです。肺がん患者の症状と終末期の看護についてまとめていきます。
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肺がん患者の症状
上大静脈症候群
血流障害によって起こる症状です。縦隔への浸潤や腫瘍による上大静脈の圧迫が原因。上肢や頭頸部、上半身にうっ血がおこります。その結果、顔面や上腕の浮腫、頸静脈の怒張などの症状がみられます。小細胞肺がんによく見られる症状です。
嗄声
嗄声は反回神経麻痺によって起こります。縦隔内で迷走神経より分岐したものが反回神経です。食道や肺と接しているため、腫瘍や転移したリンパ節によって圧迫されたり反回神経麻痺がおこったりします。反回神経の走行は長いですが、右反回神経より左反回神経のほうが長いため左のほうが障害になりやすいです。
ばち指
原因ははっきりとわからないと言われていますが、ばち指の90%が肺がんに由来するそうです。何らかの理由で手指や足趾の末梢軟部組織が腫大し、指先が太鼓のばちのような状態になります。そして爪が膨れ上がるため、爪が手のひら側へ彎曲した状態になります。
がん性胸水
健康な状態でも胸水は少し貯留しています。腫瘍が胸膜へ浸潤すると、毛細血管や胸膜が炎症を起こし胸水が異常に貯留してしまいます。
胸水貯留により肺が圧迫され呼吸苦や胸痛が生じてしまいます。胸水貯留に対して胸腔ドレナージを行ないますが胸水が増加し続ける場合には、胸膜癒着術を行ない胸水がたまる空間をなくす治療を行ないます。
疼痛
腫瘍の増大や胸水貯留による臓器の圧迫や骨転移などが原因です。鎮痛剤や医療用麻薬の使用、骨転移の場合には放射線治療も有効です。
抗がん剤治療をやめるということ
抗がん剤治療を行ってがんが縮小し状態がよくなる患者さんや完治する患者さんもいますが、期待している効果がでない患者さんも残念ながら少なくありません。
治療効果がない場合、抗がん剤治療は体力も気力も消耗するものです。抗がん剤の副作用によってQOLが低下してしまう場合もあります。
患者さんにとって抗がん剤を続けるメリットよりもデメリットの方が大きくなってしまった時…、医師から「抗がん剤の治療の治療を続けることはデメリットの方が大きくなってしまったので、これ以上続けることは勧められない。今後は対症療法を行って日常生活を送るのが良いのではないか」という旨のBSC(ベスト・サポーティブ・ケア)のICを行います。
しかし、患者さんの中には「抗がん剤治療をやめることは、死ぬのをただ待つだけ…。」と思う方が多くいらっしゃいます。そのため、医師からこのようなICをされたときは絶望的になってしまいます。
逆に「抗がん剤治療をやめたい」と医師に言うことができない患者さんもいます。一人ひとり患者さんやご家族の想いは違うので、看護師はその想いを引き出して医師やチームへ上手く伝達していくことが求められます。看護師のサポートで患者さんが最良の選択ができるといいですよね。
抗がん剤治療を行いながらも「患者さんにとって抗がん剤治療をどこまで行うのがよいのか」を考えることは、がん看護を行う上でとても大切なことです。
肺がん患者の終末期
肺がん患者は、終末期に呼吸苦を訴えることが多く、全体の約70%に及ぶと言われています。呼吸苦の原因としては腫瘍増大や胸水貯留によるものが大きいです。肺がん患者の呼吸苦に有効な塩酸モルヒネを使用して緩和を図ります。
がんの増悪によって咳嗽に苦しむ患者さんもいらっしゃいます。リン酸コデインを定期的に内服しコントロールしていく治療を行ないます。
また、がんの増悪や骨転移によって疼痛を訴えられる患者さんもいらっしゃいます。患者さんの状態に合わせて、内服や貼付薬、持続注射にて治療を行い、疼痛コントロールを図ります。
終末期の患者さんの苦痛を取りのぞく治療には、医療用麻薬を使用することもしばしばあります。患者さんの中には、間違ったイメージから使用を嫌がる方もいらっしゃいます。なぜ嫌なのか患者さんも想いをしっかりとを聞き、ここで使用するのは「医療用麻薬」であること、適切な量を使用することで苦痛を取り除くことができることをしっかりと説明してください。
終末期に使用する薬は副作用として便秘になるものが多いです。終末期には活動量も低下に伴い腸管の動きも低下するなど、いろいろな便秘の原因が考えられます。看護師は排便の性状や回数、変化などを患者さんとともに確認しましょう。排便時に強い怒責をかけることによって、呼吸苦が増大してしまいます。「副作用で便秘になるからあの薬は使いたくない」と患者さんが言われないよう、終末期だからこそ排便コントロールをしっかりと行なっていきましょう。
ここ数年は、緩和ケア科の介入により、がん患者さんの身体的・精神的苦痛はかなり軽減されているように思います。そのため、苦痛なく亡くなられる患者さんも多くいらっしゃいます。患者さんの一番そばにいる看護師がしっかりと観察ケアし、医師や緩和ケアチームと連携していくことがとても大切です。
患者さんの希望とがん看護のやりがい
患者さんやご家族は、がん告知されてから「亡くなる前に〇〇がしたい」という希望を持っていることがあります。家族旅行だったり、お墓参りだったり、在宅で終末期を過ごすことだったり、人それぞれ違います。
状態が良いときにその希望を叶えられるのが一番ですが、うまくいかない患者さんもいらっしゃいます。
肺がんの場合、終末期に酸素投与が必要になってくる患者さんが多くいらっしゃいます。酸素投与しているからできないとあきらめてしまう患者さんやご家族の方がいます。
たしかに困難な場合もありますが、医師や看護師をはじめとする患者さんをサポートするチームがあれば、多くの希望を叶えることが出来ます。
いろいろな調整に大変なときもありますが、患者さんやご家族の希望を叶え、患者さんやご家族が望む最期が過ごせられるようにサポートすることは、がん看護のやりがいだと感じています。
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